「なぁ、マリー。
もうアンタにバレンタインする気はねぇケドさぁ…
‥‥‥もしも、だゼ?」


どこか神妙なアンジェラの低い声に、マリーの片眉がピクリと上がった。


「もしも… もしも俺がココから出てく日が来たら、デスクの引き出し見てくンない?
アンタにプレゼント用意しとくから。」


「‥‥‥‥‥死亡フラグ?」


「死亡フラグ??!!」


マリーの一言に反応した菜々が 両手で口を覆う。


「そそそんな… まままさか…」


「勝手にフラグ立てンなよ。
『もしも』の話だから。」


アンジェラはいつも通りの柔らかい笑顔で、菜々の頭を優しく撫でた。

ほほほんとに?!、まじまじ、死亡しませんヨネ?!、だーから勝手に殺さないで…

腕に縋りつく菜々を、アンジェラが笑いながら宥める。

彼だって、老獪な大人だ。

二人の様子を黙って眺めていたマリーが口を開いた。


「ドコだって?
クローゼットの中?」


「いやいや、デスクの中。
人の話はちゃんと聞け。
てか、他は見ないで。」


大人ってヤツは秘密が多い。