「ほら、子供の服だ。
ハンコ押すから書類出しな。」
住人は部屋の隅にゴミと一緒に丸まっていた布を、男に投げ渡した。
男はその布をゆっくり広げる。
あちこち破れ、不穏なシミが幾つもついた、汚れきった体操服…
顔を上げて糸目で笑った猫背の男は、押入れの前に腰を下ろした住人に問いかけた。
「で、お子さんは本当は、ドコにいらっしゃいます?」
「あぁん??!!」
途端に住人は気色ばむ。
ナニ笑ってやがンだ。
キモチ悪ぃンだよ。
オドオドしとけよ。
ビクビクしとけよ。
従順に尻尾振りやがれ!!
「どーゆー意味だ、ゴラァ!!
黙って書類出せやぁぁぁ!!」
住人は唾を撒き散らしながら、慣れた様子で怒声を吐いた。
猫背男の顔から笑みが消える。
彼は、見逃さなかった。
アルコールに濁った住人の精一杯の鋭い視線が、一瞬逸れたのを。
背後にある、押入れの襖に注がれたのを。
「ソコか。」
さっきまでの間延びした口調とは全く違う低い呟きに驚く暇もなく、住人は大股で迫ってきた男に押し退けられた。



