住人はゴマシオ頭をゾリゾリ撫で上げながら、愛想笑いを浮かべた。
「どーぞ、上がって行きな。」
「あっ どーもスミマセン。」
ペコペコ頭を下げて靴を脱ぐ猫背を見ながら、住人はドアを閉めた。
(コイツならチョロい。)
磨かれた靴。
パリっとした白いYシャツ。
無難な紺のスーツ。
明らかに生温い世界の住人だ。
それに、このオドオドとした態度…
チラっとガキっぽい服でも見せて、書類を出させればいい。
個別訪問までするくらいだから鞄の中に入っているだろう。
部屋に難癖つけられても、いつものように黙らせればいい。
そして、一番高い額で審査が通るよう、脅しつけて…
「散らかってて悪ィな。
仕事と子供の面倒見ンので手一杯で、ゴミ出しも満足に出来ねぇンだよ。」
「へぇぇ…
大変そうデスねぇ…」
猫背男は怪訝そうに、だが遠慮がちに、チラチラ部屋を見回している。
この様子では、難癖をつける根性もなさそうだ。
とっとと終わらせてしまおう。