柔らかく胸に触れた指先が、身体のラインをなぞるように背中に回った。
決して強い力じゃない。
頼りなく儚げな抱擁。
なのに、振り払えない。
動くことすらできない。
ナニコレ?
絡め取られてしまう。
身体も、心も、魂まで。
「憎め、なんて…言わないで…
そんなの、無理なんです。
私… 私…」
知らない女が、マリーの胸に埋めていた顔を上げた。
それはやっぱり菜々だった。
だが、マリーの知らない菜々だった。
「マリーさんが、好きです…」
消え入りそうな、だが、火の七日間レベルで全てを焼き尽くしそうな、熱を孕んだ囁き。
ココか、鼻血。
マリーは、恥ずかしそうに俯いた菜々を突き放すことも抱きしめ返すことも出来ず、バカのように突っ立っていた。
鼻の下に、生温かいモノを感じながら…
オトーサンがスキ☆とか。
猫がスキ☆とか、そんな…
いやいや。
現実から逃げンなよ。
重みが違うだろーがよ。
視界が回り、足元が揺らぐ。
こりゃ幻覚か?
だーかーらぁ。
現実逃避すんなって。