bloody mary


寝言にタバコ、ね。

男は詰めが甘い。
そして女は鋭い。

全部お見通しってワケだ。

情けなさそうに頭を掻くマリーを見上げて、菜々は、笑う。

また、笑う。


本当に笑っているのだろうか?

目を細めてみても、彼女を縁取る目映い朝陽に邪魔される。

心が見えない。


「無駄に笑うなっつったろ?
泣け。怒れ。俺を憎め。
俺は、おまえが父親に愛されるかも知れない未来を奪った。」


うふふ…

笑う、笑う、光を纏った女が。


「マリーさんは嘘つきです。」


ダレだ?コレ。

菜々じゃない。


「父は…
なんかおかしくなってました。
アレはお酒じゃないと思う。
それにもしも父が普通でも、そんな未来は来なかった。
父にとって私は、娘どころか人間じゃなかったから。

ほんとはマリーさんだって、わかってたンでしょう?」


知らない女が、白くしなやかな手を伸ばす。

さりげなく、だが確実に築いた壁を、いとも簡単に突き崩して。