苦しげに背中を丸めた父親が、血走った目でマリーを仰ぎ見て…
息を飲んだ。

ヤバい男だと知っていた。
前に会った時も、凶暴な眼差しに恐怖した。

だが…
ここまでではなかった…


「菜々は俺のモンだ。」


凶暴どころの話じゃない。

暗すぎる。
冷たすぎる。
瞳の中に『死』が見える。


「近寄れば、殺す。
…そー言ったよな?」


ナンダ?コイツ。
人間じゃない。

殺される…

死神に、殺される…


「あ… あぁぁぁ… ぁぁぁ…」


光が失せた目で。
震える唇から涎を垂れ流しながら。
迫り来る『死』から逃れようと 父親は無様に地を這いだした。


「イイゼ?
逃げろ。全力でな。
俺も全力で追う。」


這っていては逃げきれない。
父親は起き上がり、痛む腹を抱えてヨロヨロと走り出す。


「おまえはもう俺の獲物だ。」


穏やかで冷ややかな死神の声が どこまでも追ってくる‥‥‥