bloody mary


コワイ…
イタイ…

乱暴に掴まれた髪を必死で押さえながら、菜々はまた恐怖と苦痛に全身を震わせた。

だがコワイのは、もう父親ではない。
喪失だ。

イタイのは頭でも頬でもない。
胸だ。

ナニモカモ、失ってしまう。
やっぱり夢になってしまう。

菜々を引き戻す『檻』の声が聞こえる。


「あの男の一物はくわえこむクセに、俺のためにゃあ出来ねぇってか?
そりゃねぇだろ。」


違う、違う!
あの人はそんなコトしない!

苦しい、苦しい…


「親孝行しろよ。
おまえは俺の娘だ。
一生俺のモノなンだよ。」


違う、違う!!

あぁ、息が出来ない。

でも‥‥‥


「わ… 私、は…
お…父さん‥‥‥ ゼイッ ゼイッ
の モ…じゃない!」


荒い呼吸の中、それでも菜々は精一杯叫んだ。

髪が解放される。
怒りに歪んだ父親の顔が見える。
腹に向かって振り下ろされる足も‥‥‥

ゴっっっっっ!!