bloody mary


今からナニが起こるのか。
自分がどんな目に遭うのか。

充分すぎるほどわかってはいたが、菜々は止まらなかった。

きっとココが踏ん張りドコロ。

理不尽に抗って。
自らの心のままに。

人として生きることを、あの人に教えてもらったのだから。

もう私は、お父さんの知ってる私じゃない。

菜々は蒼白になりながらも、強い眼差しで父親を見据えた。


「も… もう…
もう私は、ドナドナじゃない!
荷馬車は子牛に乗ったりしな…

あれ?」




ソコで躓いてどーする。


「んだとぉぉぉぉぉ??!!
俺に逆らう気か?!
このクソガキがぁぁぁぁぁ!!」


意味不明語になってしまったものの、拒否のニュアンスだけは伝わったようだ。

血相を変えた父親が、耳馴染みのある怒声を吐きながら拳を振るった。

ガっっ!


「あっ」


短くか細い悲鳴を上げて、アスファルトに横倒しになる菜々。

容赦ない一撃を実の娘に加えた父親は、さらに容赦なくその柔らかい髪をひっ掴んで引きずり始めた。