bloody mary


「なぁ、早くしろって。
おまえだってあんな男より、お父さんのトコロに戻ってきたいだろ?」


売られちゃったら、戻れるワケないのに。

それとも、売られて戻されて、また売られて…
そんな繰り返しなのかな?

モー、ドーデモイイ。
ナンダッテイイ。

てか「ドナドナ」以外の歌詞が出てこない。

ドナドナドーナー‥‥‥


(‥‥‥‥‥あんな男…?)


突如として菜々の脳に割り込んできた鋭い眼光が、気の毒な子牛をスっ飛ばした。

もう「ドナドナ」の歌詞を思い出す日は来ないだろうと思えるほど、そりゃもうキレイサッパリ。


『おまえも闘え』


菜々は腕を掴む父親の手を振り払った。


「い… 行かないっ!!」


「‥‥‥‥‥あ?」


ゆっくり振り向いた父親の頬が 痙攣したようにピクピク動くのを菜々は見た。

コレはよくない兆候。
嵐のような暴力の前触れ。

その嵐に嫌というほど晒されてきた菜々にはわかる。