コレならどーだ?
洗車も未経験だろうが、お手伝いは菜々の大好物。

ハードル下がったろ?


「…ハイ!」


ハイ、イイお返事。

曇っていた顔をパっと輝かせ、菜々は嬉しそうに頷いた。

ほーらね?
思った通り。

用が終わったら、菜々が喜びそうなトコロを回ってやろう。
缶コーヒーでも持ち込んで。
カーラジオでも聴きながら。

マリーは唇の左端だけを持ち上げて薄く笑ってから、チラリとアンジェラを見た。


「おまえも行くだろ?」


「洗車はヤだ。」


「ワガママか。」


そっぽを向いたアンジェラを、眉を顰めたマリーが睨む。


(ワガママじゃねーし。)


素知らぬ顔でティーカップに口をつけながら、アンジェラは思う。

そもそもの始めから、ドライブに行く気なんてなかった。
彼だって、野郎と距離を縮めるなんて真っ平。


(『二人』の距離は、どーなるだろねー?)


アンジェラは胸の内でほくそ笑んだ。