「なーなー。
菜々ちゃんだって、ドライブ行きたいよナー?」


ティーカップに紅茶を注ぐ菜々を、テーブルについたアンジェラが上目遣いで見上げる。


「え… えーと…?」


マリーの前、アンジェラの前、とカップを差し出しながら、菜々は困ったように首を傾げた。

そりゃそーだ。
彼女は、行きたいとは言わないだろう。

遠慮深い、というのもある。

だがそれ以前に、菜々はおそらくドライブ未経験者。

バスで遠足、なんて学校行事に参加していたコトすら疑わしいのだから、車自体が未経験という可能性もある。

だから、戸惑っているのだ。

初めてカフェで食事をした時のように。
初めてショッピングをした時のように。

マリーはケーキを一口頬張りながら、ジっと菜々を見つめた。


「あ… 私は」


「菜々。」


『私はイイです』

菜々がそう答える前に、ケーキを飲み込んだマリーが口を開いた。


「明日洗車場行って、車洗うンだケド。
手伝ってくンね?」