部屋に戻っていく菜々を扉が完全に隠すまで、マリーは彼女の背中から視線を逸らすこともできずに硬直していた。


「‥‥‥ナンダ?アイツ。」


「フフ。
さー、なんだろね。」


ようやくポツリと呟いたマリーに、キッチンから出てきたアンジェラが含み笑いを漏らしながらコーヒーを手渡した。

どうやら彼は、一部始終を見ていたようだ。


「菜々のヤツ、こないだから変なンだよ。」


「変?」


「なんか、たまに…
ビックリするほど変な顔…
いや、違ェな。
色っぽいっつーの?
艶っぽいっつーの?
そんな顔すンだよ。」


ソコまで気づいてて、まだわかんねーカナ。

笑えるほどニブい。
たまには少女マンガも読めばイイのに。

心から訝しげな表情で首を捻るマリーを見て、アンジェラは苦笑した。


「女のコってのは、ちょっとしたキッカケで女性ホルモンの分泌が活発になって、ビックリするほど女らしく、綺麗になるモンなの。」


「あー… 生理か?」


「‥‥‥‥前途多難だなぁ…」