夜になると、随分冷える季節になった。

でももう、凍えることはない。
拾ってきた段ボールで寒さを凌ぐ必要もない。

毎日三食のあたたかい食事。
清潔な部屋と衣服。
そして、何かを差し出さずとも与えられる、安心感と優しさ。

一般的には当たり前のことだが 菜々にとっては驚くばかりの満たされた環境だ。

これ以上望むことはない。

なのに…

柔らかい羽毛布団にくるまった菜々は、溜め息を吐いた。

実は彼女は、マリーに恋をしている。

ん?
今更ってか?

まぁまぁ。
そー言わずに聞いてやってよ。

本人は隠しおおせてるつもりだし、当のお相手は全くもって気づいてないから。

菜々は別に、自分と同種の愛情をマリーに求めているワケではない。

自分にはもったいないと思うほどの幸せを、彼にはもう貰っているから。

でも…
もう少し。後、少しダケ。

ワガママ言っても許されるのなら。

せめて…


(女のコとして、見てもらえないカナ…)


さっきより深い溜め息を吐きながら、菜々はモソモソと寝返りをうった。