もう用は済んだ。
こんな悪趣味な地下室に、長居は無用。

マリーはアンジェラを担いだままスタスタと歩みを進め、下りてきた階段を上り始めた。

モゴモゴ言ってた殺人鬼がストールを吐き出したようで、彼らの背中を脅迫と懇願が追ってくる。


「やめろっ
私が死んだら、私の一族が許さないゾ!
どんな手を使っても、死刑台に上げるゾ!」


ご安心を。
捕まらないから。


「やめろっ やめてくれっっ!!
金は幾らでも払う!
おまえ、幾ら貰った?!
その倍… いや、10倍払う!!」


悪ィな。
そーゆー買収的申し出は、聞かねぇコトにしてるから。


「やめてくれ…
助けてくれ…
どうしてこんなコトに…」


There's no escape from Death.
おまえに助かるすべはない。

階段を上りきったマリーは、くわえたタバコに火を点けた。

一度だけ深く吸い込み、一度だけ深く吐く。

おまえに経はいらねぇだろ?
地獄に落ちろ。

マリーは火が灯ったままのタバコを投げ落とした。

それはもう、無造作に。

殺人鬼の断末魔は、鉄の扉で遮断された。