マリーはどこまでも遠慮なく、扉を開けて階段を下りた。

気配を消すとか、足音を消すとか、そんな配慮は全くない。

まるでオカーサンが、ちょっと荷物を取りに下りてきたような気軽さ。

だから足音を聞き、血飛沫を浴びた顔で振り向いた殺人鬼も…


(…ダレ?)


ナニが起こっているのかもわからず、ただマリーを見つめた。

警察?

いやいや。
なら、一人で踏み込んではこないだろう。

雇った用心棒のダレか?

こんなヤツ、いたっけか?
いやいや、ココには来るなってちゃんと言ったはずだ。

ソレよりナニより、ナンデそんなにフツーなの?

鉄錆のような臭いが染みついた地下室。
ランタンの灯りで浮かび上がる 一目でそれとわかる血痕。

活きが良すぎたため、人形にする前にサンドバッグにしてしまった血塗れの生け贄は、古びたパイプベッドに拘束されている。

そして万力を手にした自分は、すでに意識朦朧となった生け贄の足を絞め上げている。

かなりショッキングな状況ではナイかい?

ナンデ、顔色も変わンないの?
ナンデ、フツーに歩いてンの?

まさか幽霊?

こんな人形、見覚えないが…