戦慄したとは言え、一度覚えてしまった快楽の欲求に抗うことは難しい。

殺人鬼は次のお楽しみの準備を着々と進めていた。

あんなのはただの噂だ。

恐れることはない。

あの人形がまだ生きていたということすら、疑わしいのに。

もしも生きていたとして。
噂通りの言葉を言い遺していたとして。

それでも恐れることはない。

死神は金で動くのだから。
あの人形が、そんな大金を持っていたとは思えない。

それ以前に、死神の存在すら知らなかっただろう。

あの死神が、依頼もなく、正義の味方面してやって来るはずがない。

大丈夫、大丈夫。
恐れることなど何もない…

自信と憂慮の狭間で揺れ動きながらも欲望に忠実なイカレた殺人鬼は、今夜も地下室へ繋がる厚い鉄の扉を開けた。

そこは架空の名義で手に入れた郊外の農場内にある家屋だ。

人を雇い入れ、昼間は本当に農業を営んでいる。
訪れる時には、何ヵ所も別の場所を経由して警察の目を眩ましている。

そんな努力の甲斐あって、殺人鬼とこの農場の繋がりはまだ誰にも知られていない。

ここが拷問殺人の犯行現場。

殺人鬼にとっての楽園、犠牲者にとっての地獄だ。