向かい合って、香り高い紅茶を一口。

アンジェラは菜々に、気になっていたコトを聞いてみることにした。


「菜々ちゃんってさぁ、マリーといつ知り合ったの?
ココに来た時に初めて会ったワケじゃないンでショ?」


本当は、前からずっと聞きたかった。

でも、聞けなかった。
菜々の傷を、抉ってしまいそうだったから。

彼女がマリーと出逢ったのは、間違いなく虐待を受けていた頃だから…

でも、今なら聞いても大丈夫だという確信がある。

負った傷は消えることはない。
だがそれよりもマリーとの記憶のほうが、彼女の中で重要性を増しているはずだ。

だっておそらく、菜々はマリーを‥‥‥


「知り合った…
ワケでもないンです。
なんて言うか… 通りすがり?」


ティーカップを両手で包むように持ち、照れ臭そうに俯いた菜々が言う。

ほらね?ビンゴ。
顕著に可愛さ増してンじゃねーか。


「私…
あの夜、家を放り出されて…
スゴく寒くて。
せめて風が当たらないトコロにいようと、近所のお宅の塀の隙間におジャマしてたンです。
そしたらソコに、鼻血を出したマリーさんが通りかかって…」