「あの…
良かったら、コレ…」


か細い声が聞こえたほうを見ると、ポケットティッシュが差し出されていた。

ソレソレ。
ソレ、探してたの。

まじ神。


「おー、ありがと…」


ティッシュを受け取ろうとした鼻血男の手が、ピタリと止まる。

そのティッシュは随分低い位置にあった。

持っているのは、隣接する家の塀の間に挟まるように蹲る、痩せこけた子供。

ナニ時代?と思うようなザンバラ髪で、ゼッケンがついたボロボロのジャージを着ている。
三月とはいえまだ夜は冷えるというのに、靴も履いていない。

その上、その顔は…

片目が見えなくなるほど、切れて腫れ上がった瞼。

唇の端に固まった血。

全裸大学生よりも原型を留めていない頬。

もちろん、鼻の下には…


「…
ソレ要ンの、おまえのほうじゃねーか?」


鼻血男は手を引っこめ、子供の前にしゃがみ込んだ。


「あは… そっかぁ…
じゃあ、半分こ。」