フローリングの床に散乱する、ガンオイル、フロス、ブラシ…その他諸々。

そして、拳銃。

いざって時に、使い物にならなかったら困るしね。
たまにはイジっとかなきゃ。

てなワケで、床に胡座をかいて座り込んだマリーは、只今商売道具の手入れ中。

なんで直に床に座ってンのかって?

答えは簡単。
無駄にだだっ広いマリーの寝室には、キングサイズのフロアーベッド以外はナニもナイのだ。

ラグもナイ。
カーテンすらナイ。
正真正銘、ナニもナイ。

イイじゃん。
寝られりゃいいンだよ。

悪ィか。

コンコンっ

控え目なノックの音に、マリーは顔も上げずに返事をする。


「おぅ、入れー。」


「あの…お洗濯物を… え?
マリーさん、ソレ…」


扉が開いて顔を覗かせたのは、菜々だった。

それもそうだ。
あんなに可愛らしいノック、アンジェラではあり得ない。

こりゃ… マズったか?

菜々にはまだ、マリーの仕事のことは教えていない。

マリーが恐る恐る振り返ると、洗濯物を胸に抱えた菜々は目を丸くしてドアの前に立ち竦んでいた。