「あ… 水を飲もうと思って。
なんだか、眠れなくて…」


菜々が首を傾げて微笑む。

靴を脱いだマリーは、パジャマ姿で佇む小さな彼女をジっと見つめた。

全然違う。
背丈も、雰囲気も。

菜々のほうがずっと幼い。

だが、同じ年頃なのだ。
菜々と真梨香は。

いつか恋をするのだろうか。

いや、いつか必ず恋をする。

真梨香のように、泣いて、笑って、傷ついて、そしていつの日か、ただ一人と決めた男と…

菜々も‥‥‥

そこまで考えて、さっきまでの動悸が切ない痛みに変わっていることにマリーは気づいた。

ナンダ?コレ。

菜々が女になる日を想像して、胸を痛めるなんて…


(本気でオトーサンじゃねーかよ。)


溜め息で思考を遮断したマリーがトリップしていた意識を取り戻すと、目の前の菜々は見事にゆであがっていた。


「ナ… ナナナンデショウ?」


頭から湯気を出しながら菜々が言う。

なんか… ごめん。

思ったより長時間、ガン見してたみたいデスネ。