「こーゆー時は、女に胸を貸すモンでショ!
男なら!
オニーサン、絶対モテない人だヨネ!」
…
ほっとけや。
『こーゆー時』ですら、上からデスカ。
ソーデスカ。
ハイハイ、女王様。
仰せの通りに。
憮然としながらも、マリーは黙って片腕を伸ばして少女の頭を抱え寄せた。
「オニーサンの言う通りだ…
私がバカだった…」
泣き声ではない。
だが胸が痛むほど切ない声音で囁くように少女が言った。
うん。
激しく同意。
確かにバカだ。
「だが、可愛い女だ。
そー言ったろ?
次は相手を間違えるな。」
低く呟いたマリーがしなやかな黒髪を撫でると、とうとう少女は声を殺して泣き出した。
たくさん泣けばいい。
気の済むまで泣けばいい。
その涙で、土足で踏み荒らされた心を洗い流せばいい。
また誰かに恋をするために。
真っ白な心で、その誰かを信じるために。