「こーゆー時は、女に胸を貸すモンでショ!
男なら!
オニーサン、絶対モテない人だヨネ!」




ほっとけや。

『こーゆー時』ですら、上からデスカ。
ソーデスカ。

ハイハイ、女王様。
仰せの通りに。

憮然としながらも、マリーは黙って片腕を伸ばして少女の頭を抱え寄せた。


「オニーサンの言う通りだ…
私がバカだった…」


泣き声ではない。

だが胸が痛むほど切ない声音で囁くように少女が言った。

うん。
激しく同意。

確かにバカだ。


「だが、可愛い女だ。
そー言ったろ?
次は相手を間違えるな。」


低く呟いたマリーがしなやかな黒髪を撫でると、とうとう少女は声を殺して泣き出した。

たくさん泣けばいい。
気の済むまで泣けばいい。

その涙で、土足で踏み荒らされた心を洗い流せばいい。

また誰かに恋をするために。

真っ白な心で、その誰かを信じるために。