「命拾いしたな。」
低く呟いたマリーが、唇の端を歪めてオヤジに笑いかけた。
「おまえは賢いようだ。
なら、わかるな?
次はねぇよ。」
席に戻ってお行儀よく荷物と伝票を取り、お行儀よくレジで会計を済ませてファミレスを出るマリーの背中が完全に見えなくなってから、オヤジは椅子に崩れ落ちた。
なんスか、アレ、情けねーな、実はヘタレなンスか、ヤクザのクセしてあんな男に…
優男が非難と軽蔑を露に悪態をつき続けているが、怒る気にもならない。
このバカにはわからないのだろうか。
サングラス越しとはいえ、あの男の目を見たというのに。
脳がバクチで侵されてるから?
それともコレが、若気の至り?
どちらにせよ…
「おまえ、長生きしたきゃ噛みつく相手はちゃんと選べよ。
金返さねぇまま死なれちゃ、コッチも困るしな。」
脱力しきって椅子の背もたれに身体を預けたオヤジが、疲れた声で言った。
思い出したように新しいタバコに火を点け、深く吸い込む。
一気に年をとったようなオヤジを、優男は眉を顰めて横目で見た。
「どーゆー意味っスか。
あんなヤツどってコトねぇし。
もっとイカツくてコエぇヤツ、ゴロゴロいンでショ。」



