「なー、菜々ちゃん。
学校行きたくない?」


筑前煮をつつきながら言ったアンジェラの言葉に、マリーと菜々が顔を上げた。

菜々は今年16才。
本来なら、高校に通っている年齢だ。

以前の生活では、願っても叶うことはなかっただろう。

だが、今なら…


「私… 勉強できないンデス。
小学校も中学校も、少ししか行ってないから…」


菜々はテーブルに視線を落として首を横に振った。


「教えてあげるよ?
これからのためにも、高校くらい出といたほうがイイし…」


俯いてしまった菜々の顔を覗き込みながら、アンジェラが優しく諭す。

確かに彼の言う通りだ。

菜々がこの先どういう生き方を選ぶにせよ、ある程度世間に認められる教育を受けさせておくべきだろう。

もちろん、学力のことだけではない。

友人を作ったり、教師のくだらない話を聞いたり、恋なんかもしちゃったりして、人との関わり方を覚えていく。

学校は社会で生きていくための人間関係能力を培う、大事なステップなのだ。

しかし…

今の菜々の場合はどうだろう?