「?! バレてる?!
まま不味かったデスカ?!」


「や、さっきコレ飲んだ時のおまえの視線が、異常に熱かったから。
旨ェよ。」


マリーの言葉に、胸を撫で下ろした菜々が頬を薄く染めた。


「出汁もちゃんと取ったンだゼ?
菜々ちゃん几帳面だし、物覚えもイイし…
すぐに俺なんかより旨いメシ作れるようになるよ。」


「ああアンジェラさん…
ハードル上げないで…」


手放しで褒めちぎるアンジェラの袖を菜々は慌てて引くが、やはりその顔は嬉しそうに緩んでいる。

彼女は随分積極的になった。

この家では失敗しても殴られないとわかってからは、家事も自ら進んで手伝い、様々なことを急速に吸収している。

年相応の女のコらしい格好にも慣れ、もう新しい服に袖を通しても右手と右足を同時に出して歩くこともなくなった。

アンジェラに肌や髪の手入れを教わり、最近では出掛ける時に淡いピンクのリップを塗っていたりする。

まだまだ細いが、丸みを帯びてきた身体。
瑞々しい白い肌。
健康的な桜色の頬。

そして、シャンプーの香りがする艶やかな髪。

もう菜々は、一見普通の愛らしい少女だ。

あくまで『一見』ではあるが。