「つまらないなぁ…」
海の中にある宮殿を私は泳ぎながら口を尖らせていた。
6歳の私にとって宮殿なんて、オモチャ箱と一緒。
「あ、そうだ!海の上に行こう!!」
思い立ったらすぐ行動に出る私は、怒られることを恐れていなかった。

私――姫宮ルチアは人間の…ではなく、人魚のお姫様。
宮殿は特殊なつくりになっていて周りは海なのに、宮殿の中は
空気が入っていて息が出来るようになっている。

掟で16歳まではお外(海の上)には出れないのだけれど…。
6歳の私はお構いなし。スイスイと泳いで宮殿から抜ける。
途中で執事のセバスチャンの「お、お嬢様!?」って声が聞こえたのは
気のせいじゃないと思う。けどお構いなし。

あっというまに海の上。空は暗くてキラキラ宝石見たいのがいっぱい浮かんでいる。
多分、お星様…かな。

「綺麗…あれ?誰かいる…?」
そっと浜辺の近くにある大きな岩に隠れながら様子を伺ってみる。小さな、おそらく私と同じか一つ上くらいの男の子が立っている。私は岩の陰から小さな声で歌い始める。

「♪~~♪~~」

しばらくして歌い終わると、男の子が拍手をしていた。
「誰かいるの??」
「いるわ。」
「出てきてよ。」
無邪気な声に出て行きそうになったけど、驚かれてしまう。

「私、人間じゃないの。人魚なの。それでも…いいかしら」