そんなおっさんをみた他の乗客もあたしたちだと気づいたらしく、会場の最寄り駅に着くまで間は握手会状態だった
「まさかあの中継がこんなに影響与えるとはね〜」
「………世界中のテレビ局が来たのよ
今頃あの電車の中の乗客だけじゃなくてきっと世界中の人が結果発表にウキウキしてるはずよ………」
「ねぇ、唯…一つだけ僕に約束して…」
「………?」
「たとえこのあと、どんな結果だったとしても…僕は唯に音楽を諦めて欲しくない………
本当に僕らの両親が音楽家なのか知らないけど、そうじゃなかったとしても音楽を続けてほしい………」
「蛍………」
「僕たちには親がいなかったけど…二人でこうして有りっ丈の力を振り絞ってなんとかこの世界で生き延びて来た………
やっとここまで来たんだ………唯は僕よりずっと才能がある……それに唯に負けても僕は悔やんだりしない」
「…………」
言葉が出なかった
いや、出せなかった
いままでにない感覚が襲いかかってくる

