最後に見たときと比べて随分痩せていて、顔色も悪い いまにも倒れそうな状況で取っ手によっ掛かりながら口パクでなにか言っていた あまりに遠くてなにを言っているのか分からないけど、それは確かにあたしに向けられた言葉だった 呪いの呪文でも唱えているのだろうか もう一度ホールの隅から隅まで左から右へと視線を移した 出場者の親族、講師、同級生、ただ鑑賞をしに来た親子など様々な人が客席に並ぶ 中には聖夜、校長、先生、宮本、先生までも来ていた 「マエストロ、お願いします」