夏のにおいがした。

教室は相変わらず話し声や笑い声で騒がしい。

ほとんどの女子がそれぞれのグループを組んで、それぞれの話をしていた。

昨日のテレビの話をしているグループ。
部活の先輩の話をしているグループ。
ブランド品を見せ合っているグループ。

楽しそうに仲間とはしゃいでいた。

私だけただ一人、教室のはじっこにポツンと座っていた。

ゆっくりと本を閉じる。

窓から入って来た生ぬるい風が、頬を撫でた。

私はこの季節が昔から好きだった。

過ごしやすい春は通り越してしまうけど、もうすぐ夏休みという期待に胸が高鳴るからだ。

でも、まだ夏休みは遠いなぁ。

私は本の上にうつ伏せた。