月岡くんがゆっくりと屈んだ。
すると突然、顔を近づけた。

「!?」

驚きすぎて、声も出て来ない。

いい香りがした。
香水とかじゃなくて、日曜の朝、庭に出た時のあの爽やかな香り。
「やっぱり…」

月岡くんは小さく呟いた。
月岡くんがスッと手を伸ばす。
私の頬に指が触れた。

自分の心臓の音が聞こえる。

すると、月岡くんはゆっくりと手を放し、元の姿勢に戻った。

「まつげ付いてたよ。大丈夫。ちゃんと取ったから」

月岡くんが優しく微笑んだ。