倉内楓 修学旅行翌日のブログ

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 無事、修学旅行が終わった。本当は昨日帰ってきたんだけど、すっかり疲れてしまってブログは書けなかったから今日まとめて書いている。

 旅行から家に帰って扉を開けたら、いつも以上に必死な顔でフルールが飛び出してきた。
 ああ、僕のフルール。僕もずっと君に会いたかったよ。
 フルールはニャアニャア鳴き続けて僕にしがみついた。僕がいなかったことを責めているようだった。僕を責めていいよ、フルール。それくらい、僕が必要だったということだから、もっと鳴いていいよ。
 ううん、あんまり鳴かないで。フルールを寂しくさせたことを思うと、僕の胸がとても痛んでしまうから。
 フルールは、それからしばらく僕から離れなかった。どこにでもついてきたし、身体のどこかを触れさせたがった。可愛い僕のフルール、僕も一緒にいたいよ。

 ただ、ひとつ困ったことがあった。旅行のお土産を配りに行かないといけない。従姉兄たちの家と、大事な友人のところへ。フルールに分かってもらおうとしたけど、今日の彼女は話を聞いてくれそうになかった。だから、父に頼んで彼女も一緒に車で行くことにした。
 車の中では本当はキャリーに入れなければならないんだけど、フルールはすごくいやがったから抱いていたら、とても安心しているようでおとなしくしていた。

 従兄の家についたので僕が降りようとしたら、フルールが離れたがらなくて困った。「すぐ戻るよ」と言って何とか父に預けてから、さっと渡して戻ってきた。フルールはこれで車から出ても帰ってくると理解したに違いない。次の従姉の家の時は、前より少し嫌がり方がおとなしかった。お土産を渡してすぐに帰ってきた。もっと安心したようだ。

 次はいよいよ大事な友人の家。ここは、もしかしたら少しだけ時間がかかるかもしれないが、フルールはこれまでの信用で僕を早めに放してくれた。ありがとう、賢くて愛らしい僕のフルール。

 大事な友人は僕が来たことに驚いていた。でもお土産をとても喜んでくれた。良かった。ストラップを、僕はお土産にストラップも買って渡したら、翌日(今日)もう携帯につけていてくれた。気に入ってくれて本当によかった。

 フルールにもお土産を買った。綺麗な鈴の入った和風の生地のお手玉。転がすとちりんちりんと音を立てる。そのうちフルールの爪で破られてしまうかもしれないけど、それは仕方がない。赤い生地のお手玉は、フルールと一緒にあるとよく映えて綺麗だ。

 一緒に旅行には行けなかったけど、旅行先でも一緒にいられた気がして、僕は少しだけ幸せだった。僕がこの目で見たものを同じように伝えることは出来ないけど、一緒にいられない寂しさ以外のものが、確かにあったんだと思う。
 ああでも、でももし、もしも一緒に旅行に行けたなら、どれほど世界はもっと美しく輝いていただろうかと思わずにいられない自分が悔しい。小さい自分が悔しい。もっと大きな男になりたい。


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