Diary 君の遺した物語。


ぼーっとした意識の中で意味のない質問が頭をぐるぐる回る。


気づいたら君が死んで、

気づいたらお通夜、

気づいたらお葬式が終わって、


今俺はここに立っている。
右手に握られた紙袋には、君の何冊もの日記がつまっている。
今日君の母親から受け取ったもので、
「あなたのことを娘はいつも話していました。どうぞ受け取ってください」
と手渡されたものだ。
君が経験した現実そのものの重さなのだろうか。
ずっしりと重いその袋は今にも破れてしまいそうだ。
「冬真君、あなたは今日は帰って休んで。そして、それを読んであげて」
紙袋を指さしながら君の母親はすっかり泣きはらした目でそう言った。
「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」
これ以上ここにいるとまた泣きだしそうなので、俺は火葬場を後にした。