「そいつは……どっちに行った?」 乱暴に引き寄せられて怯える宿屋の主人にお構いなしに声をあげる。 「あっ…あっちです………! ダンナが泊まっている部屋に入って 襟元を掴まれ更に手を震わせた宿屋の主人の指差す方向へ走り出した。 「ダンナ―――!!」 霧の向こう側から宿屋の主人の声が背後に響くが私は前を覆う白煙の奥へと走り込みやがて……泊まるはずだった客室へとたどり着いた。 「ハアハア………。」 肩で息をして客室の扉の近くへと近づく私の前に何かが足元に転がりこんできた。