授業終わりのチャイムが鳴り、再びガヤつきだした教室のなかに忍び込むがごとく音もなく中にはいってきたのは葵だった。 「でさー、マジむかついたんだー」 「ノート貸してくんない?」 「今日どうする?」 四方八方に飛び交う言葉たちを、すり抜けていくように葵は静かに席についた。 保健室にいっていたとされる葵の顔色はとりわけ悪くもなく、むしろ頬がうっすらピンクがかっていて何か軽やかささえ感じる。