榎本君の話し方はあたしの手を引いて導いてくれているかのようだ。

純粋で嫌味がない。


堅くなった体がゆっくりほぐれて、いつのまにか声をあげて笑っている自分に笑ってしまう。



「俺も本、読んでみよっかなー」

「読んでみなよ。楽しいよ!」

「原田さんはなんで図書委員になったの?」

「あたしは…もちろん本が好きだから……それに図書室ってなんだか落ち着くの。静かで、誰かのことを笑う声も誰かの悪口も聞こえてこないから……」




カーテンの隙間からもれる暖かな日差しが図書室を照らす。

静かな図書室に風で木の葉の揺れる音がかすかに響いた。