「……ン…」 榎本翼の瞼がゆっくり開いたのは五限目のチャイムが鳴ったのと、ほぼ同時だった。 榎本君は寝ぼけているのかぼんやりした顔でうつろにあたりを見回す。 「目、覚めました?」 「……うん…って!え?!何?!?俺もしかして寝てた?!?」 「うん…ぐっすりと…」 「普段、本なんか読まねえから活字見ると眠くなったんだなー…」 彼はひとりごとのようにポツリと小さく自己分析を呟いた。 人と話すのが大の苦手なあたしは初めて話す榎本君を前に緊張して心臓が爆発してしまいそうになっている。