翼くんは教室から離れたところにある非常階段に通じる廊下でちいさくうずくまっていた。
そっと近づく。
「……泣いてると思った?」
顔をあげた翼くんの目に涙はなくて、ただ弱々しく笑っていた。
「ハハッ。みんなにバレちゃった。もう哲にも知られた。言おうと決心はしたんだけど……まさかこんなカタチで伝えるとは思ってなくて…なんかやっぱ……キツいなぁ」
あたしは黙って隣に座っていることしかできなかった。
歯がゆくて、苦しい。
「でも、ありがとう。原田さんがいたから心強かったよ。原田さんがいたから本当のこと言えたんだ」
翼くんは今きっとすごく辛くて、すごく苦しいはずなのに
あたしに暖かい言葉をかけてくれた。
なんでこんなに優しいんだろう。
泣いてしまいそうだ。



