俺の言葉のあと、張りつめた空気があたりを覆った。

かすかな風がカーテンをゆらす。
同時に葵の髪もサラサラなびく。


葵はたじろぐことなく俺を見たままゆっくり口を開いた。


「……哲ちゃん、もっとよく見て。哲ちゃんを本当に見てくれている人がきっといるから…」


静かな力強い声だった。

そしてゆっくりと扉の元へいき、もう一度振り返った。


「……ずっと助けてくれて、ありがとう」


それから葵はまるで風のように保健室から去っていった。



俺は呆然と葵がでていった扉を眺めていた。