そのとき、地獄はもうあたしの足を掴んでいたんだ。
哲ちゃんはモテた。
そりゃあ顔もイイし明るいし勉強できるしバスケ部のエースだと女の子が騒がないはずがない。
そんな哲ちゃんに彼女ができた。
しかもその相手はひとりぼっちのあたし。
今まで“幼なじみ”だということで、渋々許してくれていた女の子たちにとって“彼女”という格はもう許されるものではないらしい。
あたしは徹底的に虐めぬかれた。
靴は隠されるし
体操服は切り刻まれるし
教科書は捨てられて
トイレに1時間くらい閉じこめられて
隠れた場所で殴られたり蹴られたりした。
彼女らの手口は巧妙で哲ちゃんも先生も誰も気づかない場所で密かに行われた。
だけどこんなのは地獄じゃない。
だってあたしには哲ちゃんが傍にいてくれたから。



