次の日。

私は跳ね起きて、鳥の様子を見る。

鳥は何も無かったかのように元気だった。

あー、良かった。

ホッとすると、私の部屋のドアがノックされる。

まさか…涼くんだったりして。

悪い予感は必ず的中する。

「入るぞー」

私はバタバタ鳥をシーツの中に入れ、部屋のドアを開けた。

「どうしたんだ?バタバタして」

「ううん、何でもない、何でもない」

顔の前で手をブンブン振って、私は涼くんに聞いた。

「で、何の用?」

「いや、俺はこの一週間、仕事でいないから、留守番頼むよ」

なんだ、そんなこと。

「で?」

私が聞くと、涼くんは急に険しい目つきをなって言った。

「この頃、誰かお前の部屋に誰か入って来てないか?」

あ、多分それは小鳥のことだ。

でもなんだか嫌な予感がして、私は嘘をついた。

「え?誰も入って来てないけど…」

「ならいいや」

涼くんが立ち上がる。

「あ、あのっ、涼くんーー!」

私は慌てて呼び止めた。

「何だ」

「欲しい本があるんだけど!『光の行く手に』っていう題名でーー」

「ああ、それはダメだ」

何で?

「どうせ北原舞だろ?あいつの書く小説は絶対にダメだ」

そこまで言われたら、私も諦めるしかない。

「…分かった」

怒りと悲しみを押し殺して言ったのを、きっと涼くんは、分からないだろう。

もういいよ。どうせダメなんでしょ?

「はあ」

私は部屋を出て行く涼くんに聞こえるように、大きく溜息をついた。

…その溜息は、聞こえなかったのだが。