小さなゆびわ

「あんたの物になるのは、絶対、イヤってこと!」
言ってから、気付いた。
あぁ、また、叩かれる…。
「あーぁ、もう、手遅れね」
「うるさい」
もう、どうなっても構わない…。
「帰れ!あんたといると頭が狂う!!」
うん…。
「あたしだって帰りたいわよ!」
あぁ、もう、会いたくない…。
こんな、人に。
走り出していた。
止まれない。
ごめんね。真実。
こんなダメな親友を持って、不幸よね…。



「おはよ、真実」
「おはよ」
短く、悲しそうに真実が言った。
「き、昨日はごめんね」
「ううん、気にしないで。大丈夫だし」
嘘でしょ、真実。
顔も赤いし、腫れてんじゃん…。

体育の時、更衣室に女子が集まって着替え始めた。
「っ!?」
真実の体は、青あざだらけだった。
見たくない…。
さっと視線を逸らす。
あたしも、こうなっちゃうの…!?
あぁ、やっぱり、あたしって汚い奴だ……。
嫌な奴…。

コロンッ。
「ん?」
なぁに、これ。
あぁ、もらったピンキーリングだ。
「入んない、これ」
小さいよ、ダメじゃん!
急におかしくなった。
「うふふ」
あはははは、とはなれなかったけど。
楽しいな、とはなれなかったけど。

もう一度、ポケットに入れて、更衣室を出る。
サッカーだったけど、運動音痴なあたしは、ボールだけを追いかけ続けた。
ムダに疲れる…。
「ピィーーーーッ」
あぁ、ようやく終わった。
もう、うんざり!
あぁ、帰ろう、教室に。
あ、高田くん。
「あの、サイズ間違ってた。ちょっと、小さい」
ぼそっと、つぶやいた。
「え、マジ?大きいの買ってくる、今度」

何だろう…。
会って話すだけで、こんなにドキッとするものなの!?
この感じ、初めてなんだよなぁ…。
優しいところ。
イケメンなところ。
一途なところ。
これって、-好き-なのかな…。
でも、真実…。