小さなゆびわ

「だ、大丈夫?」
ううん…。
絶対これは、大丈夫じゃない。
でも。
心配掛けられないの…っ。
「うん、平気!ちょっと打っただけ!マスクとってくる」
事務室のマスクは、とっても大きかったけど、悲しい顔が隠れるからいいや…。
そんな事まで考えちゃって、バカみたい…。
「今日も見学するねっ!」
「うん。いいよ!」
笑って真実が言う。
あたしも笑わなきゃ。
こすれて痛いけど、必死に笑った。
「あ、高田くん。おはよう」
あたしはその言葉の後に
「ゆびわ、ありがとうね」
と言ってウインクした。
ズキッと痛む、目の周りのキズ。
「あ、ありがとう」
照れくさそうに高田くんが言った。
ドキッ…。
もう…。告白しちゃおう、あたし。

中休み。
高田くんが、あたしの彼氏になった。

                    【END】