小さなゆびわ

「ほら、何か言ったかって聞いてんの。答えて?」
「なにも、ない…」
あぁ…。
あたしの人生はこうやって嘘にまみれてく。
「あっそぉ。でも、二人分受けるかの返事は?」
「真実に、何もしないって誓ってくれる?」
もう、いやなんだけど…仕方がないよね。
「上から目線なこと!…まぁ、いいわ」
だよね…。
あたし、やっぱ偉そうよね…。
「私だけ、って誓ってよ」
「しつこいしつこい!誓うって言ってんだ!信じられないわけ!?」
「分かった…。なら、かまわないや」
はぁ…、今日から、地獄になりそう。
「今日、終わり次第体育館裏」
「は、い…」
もう、どうでもなっちゃえ…。


あたしは約束通り、体育館裏に向かった。
2,3年の女子が7,8人で待っていた。
「おっそいじゃ~ん、始めるよぉ」
「何をするのか知らないんだけど?」
もう、生意気でもいい。
タメ口でもいい。
どうせ、叩かれるんだ…!
「ほんっと生意気。うちら年上よ、先輩よ!黙ってて…!美紀、コイツの口ふさいどきなさい!うるさくて仕方ないわ!!」
んんっ…。
「スタートッ!」
きゃぁ…!
その瞬間、あたしは体中に痛みを感じた。
背中にも、顔にも、足にも。
一番つらかったのは…、お腹。
8人いれば、一瞬であたしをボロボロにできるんだ。
さい、あく…。
ゲホッ…。
意識は、気付くずっと前から失っていた。



どのくらい、経っただろうか…。
辺りは真っ暗でだぁれもいなかった。
起き上がって歩こうとすると、お腹が痛んだ。
「うぐぁっ…」
い、たい…。
「助けてぇ…っ」
門はぴしゃりと閉まってて、南京錠が頑丈についていた。
「どうしよぉ…」
どうせお腹も空いてないし。
体育館で寝ちゃえ…。


「うぅ~ん…」
はぁ…、もう朝、かぁ…。
体育館をでてくつ箱へ向かう。
あいたたた…。
ガチャ。
チャリィン。
ん?
ひとまわりサイズの大きいあのゆびわ…。
ピッタリ…。
わざわざ、探してくれたの…っ?
嬉しさと痛みに潰されてどうしようもできなくなった。

「おはよう、今日早いじゃん」
あくびをしながら真実が入ってくる。
「うん、おっはよー」
必死で笑顔を作った、つもりだった。
「ちょ…、結梨、その、顔の傷」
え。
ズキィ…!
「いったぁ…ッ」
鏡ないかな…。