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♪~♪~
少し前に流行したラブソングの着信音がやけに鳴っていた。
最初は眠気で無視していたもののあんまり長く鳴っているものだから
重い腰を起こして
テーブルの上のカバンへと
手を伸ばす。
「誰よ~…」
外は濃い紫に
近い色の空に変わっている。
もう夕方といえる時間帯では
ないようだ。
着信:桃崎 星夜せいや
お兄ちゃん、だ。
「もしも」
最後の"し"が
お兄ちゃんに掻き消された。
「お前なんで昼間
電話に出なかったんだよ。」
「え、ごめん。
寝てた…」
お兄ちゃんの声色が
いつもより心なしか怖い。
「メールも、電話も、
何度もしたのに
気づかなかったお前が
悪いんだからな。」
「どゆこと?なに?」
あたしの問いに
はぁと深くため息をついて
「いいか。
今すぐここに来い。」
「ここって、どこ。」
お兄ちゃんは黙った。
