濃君と帰蝶は上空から堕ちてくる矢を長刀で払いのけて叫んだ声にひとまず私達は格子を駆け上って屋根の上に踊りでる。
「姉ちゃん!!!」
梯子を上りきった先に諷馬が私の姿に気づき駆け寄った。
「濃君と帰蝶は‥‥?」
「まだ‥下にいるみたい‥。」
「大変‥‥‥‥!!!
と‥殿は???」
緊迫した状況に私は濃君と帰蝶の姿を確認した後…諷馬を払いのけて屋根の上に立ち尽くす殿の姿を見つけて駆け出した。
今までの無数の思いが弾けたように私は息を荒立て殿にしがみつくそれはいつかのあの日のように‥‥‥‥。
―――遠いいつかのこの戦国のある日‥。
自分の死期を感じつつ殿を戦場へと見送ったあの日にみた涙で霞んだ空を見ながら‥誓った。
―――次‥会いまみえる時は‥殿の近くで戦いたいと‥‥‥。
「殿――――!!!」
溢れだす昔の古い吉乃の想いの限り‥‥殿の体にしがみつく‥。
生暖かい体温と共に私の頭を大きな手が包む。

