私はそのまま賄いどころまで続く廊下の先を見つめ足を進めるなか何者かの話声を耳にして歩みを止めた。
「――帰蝶………。」
ゆっくり近づいた方向に帰蝶と濃君の姿を部屋の戸口から見つけて身を潜めた。
「―――帰蝶……。
聞いて………。
俺は―――――。」
いつもの濃君らしくはなく……帰蝶の背中に向かって声をあげたのに賺さず振り返った帰蝶は言葉を繋げた。
「―――濃姫様……。
私の事は……案じてくださいますな。
殿のお側にいらして下さい。
二人で誓った筈です………。
生駒の姉さまが亡くなったあの夜……殿は人目も偲んで大泣きなされました。
あの第六天魔王などと恐れられた殿を3日3晩と悲痛の想いで過ごされた殿の姿をみて…生駒のねえ様の殿の中で存在の大きさを思い知らされた筈です。
―――あの日…私達2人は殿の馬鹿げた夢を私達2人だけは見守っていこうと誓ったではありませぬか………。
戦国の遥か遠い未来の彼方で殿と生駒のねえ様が出会うための足掛かりを見守る為にどんな時でも殿のお側で見守り続けると……………。」

