月を眺めつつ放った言葉に私は胸をしめつけられた。
「―――そうですわね………。
濃君が殿に仕える理由も今となってはないですし…彼にも自分の事を考えてほしいと思います……。
―――ただ濃君抜きで芸能界デビューするって事になっちゃうんだなあって思うと淋しいですね‥。」
「うむ…………。
まあ……仕方あるまい……。」
私も金色の光を帯びる月を見上げて複雑な想いで呟く。
――確かに……この時代には濃君が命をかけて守りたかった帰蝶がいる………。
殿のところに帰蝶が嫁ぐのが嫌だという気持ち一つで暗殺を試みようと考え殿と出会い………思いがけなく濃姫として過ごした生活からは解放されて暮らす事だって今の濃君にはまたとない機会だという事がわかっているからあえてついてきてほしいとも言えない………。
もちろん……。
そうした方が得策だという事もわかってるから…殿もあえてここに置いていく事を決意したのもあるのだろう………。
――でも……なんとなく濃君にもZipangu〈ジパング〉のメンバーとして殿のお側で支えてほしいという気持ちもあった。
「茶の湯の支度が整ったか……見てきますね…。」
何も言う事が出来ず私はお膳を持ちその場を一礼して立ち去り静かに溜め息をつく。

