“緊張”
その言葉しか出てこない……。
今にも心臓が飛び出そうだ。
『目を覚ましてください、白雪姫……』
水沢くんのその言葉が聞こえた私は、さらにギュッと強く目をつむった。
水沢くんの顔が近づいてくる気配がする。
それとともに、会場がワッとにぎやかになった。
……あ、れ。
にぎやかになる会場とは裏腹に、私の中には疑問しかなかった。
キスされたら、分かるはずなのに。
ほおには、なにも触れない……。
だけど、会場は小さな悲鳴や「本当にキスしてない!?」という声でざわついていた。
水沢くんは、そのままなにもせずに私の背中に手を回し、反対の手で私の手をクイッと引っ張ってゆっくりと起こした。
……水沢くんは、キスはしなかった。

