イジワルするのはキミ限定*



大谷くんが行ってしまって、一気にシーンと静まる舞台裏。



他のみんなは教室とか客寄せなどで、ここにはいなくて私たちふたりきりになっていた。



「まさか、野上さんが白雪姫になるとは思わなかったよ。これも、縁ってやつ?」



なにか話そう……と思って、必死に話題を見つけていると、沈黙を破ったのは水沢くんのほうだった。



「わ、私も……まさか自分が白雪姫になるとは……」



水沢くんと久しぶりに話せたうれしさと、戸惑いが混じって声が少しふるえる。



どうしよう、うれしい……。



でも、水沢くんから“野上さん”って呼ばれたときは少しさみしくなった。



だって水沢くん、ふたりきりのときは……私のこと“キミ”って呼んでたから。



ちゃんと名前で呼ばれているのより、“キミ”って呼ばれたほうがうれしいなんて……。



ちょっと、おかしいかな。