「お待たせしました。ホットコーヒーふたつになります」
そう言いながらホットコーヒーを持ってテーブルに置こうとした。
……そのときだった。
「こら!危ないわよ、たーくん!お店の中は走っちゃダメ!」
そんな女人の声が聞こえてきたと思ったら、私の足にドンッと衝撃が走った。
「わっ……!?」
その拍子にバランスを崩し、私はホットコーヒーとともにその場に転んだ。
どうやら子どもが私の体にぶつかったみたいだ。
「あっつ……!!」
転ぶとともに右手に感じた熱さ。
ホットコーヒーふたつの中身がこぼれて、私の右手にもろにかかってきた。
「だ、だいじょうぶですか!?」
右手を抑えてうずくまっていると、コーヒーをもらうはずだったお客さんがかけよってきて、声をかけてくれた。
「だ、だいじょうぶです……お客様は、ケガなかったですか?」
「わたしたちはだいじょうぶでした。でもあなたが……」
「だいじょうぶです。ちょっとかかったくらいなので……」

