温かいものが触れた額に手を当ててみた。
いまだにさっきの感触が残っていて、胸がドキドキと音を立てた。
いま、額に触れたのって水沢くんの唇、だよね?
ど、どうして??
「……む、胸が壊れそう」
ポツリと自分の呟き声が空気中に放たれて消えた。
ドアの前で某然と立ち尽くす私は、顔の赤みが引くまで家には入ることができなかった。
「佳人様、柚子様のことお気に召しているんですね?」
「……まあ、ね。このこと、あの子に言ったら許さないからね」
「わかっています」
水沢くんと橘さんが車の中でそんな会話をしていたのを私は知らない……。